BEC攻撃事例ファイル

【事例】ソフトウェア更新費用を騙るBEC攻撃:巧妙な請求手口と見抜く不審な兆候

Tags: BEC攻撃, ソフトウェア更新, クラウドサービス, 偽請求書, 中小企業セキュリティ, 対策

【事例】ソフトウェア更新費用を騙るBEC攻撃:巧妙な請求手口と見抜く不審な兆候

企業の皆様にとって、日々の業務で利用する様々なソフトウェアやクラウドサービスの「更新」は避けられないものです。正規のベンダーから更新費用やライセンス料の請求が届くことは日常的なため、その手続きに慣れている方も多いでしょう。

しかし、この「ソフトウェアやサービスの更新」という慣れた手続きを巧妙に悪用するBEC攻撃が発生しています。今回は、このような手口の事例とその特徴、そして中小企業の皆様がどのようにしてこの攻撃を見抜き、対策を講じるべきかについて解説いたします。

事例の概要:日常業務に紛れ込む偽の更新請求

この事例で発生したBEC攻撃は、企業が利用している可能性のある特定のソフトウェアやクラウドサービスの「更新料」または「ライセンス料」の請求を装うものでした。攻撃者は、正規のベンダーやサービス提供者になりすまし、経理担当者や情報システム担当者(あるいはその両方に関わる従業員)に対して偽の請求メールを送付します。

メールには、まるで正規の請求書であるかのような添付ファイルが含まれている場合が多く、指定された期日までに「更新手続き」として請求金額を指定の口座へ振り込むよう指示されていました。

騙しの手口:なぜ見破りにくいのか

攻撃者は、被害者が請求内容を鵜呑みにしてしまうよう、いくつかの巧妙な手口を用いてきます。

  1. 正規ベンダーのなりすまし: 攻撃者は、企業が実際に利用している、あるいは利用していてもおかしくない有名なソフトウェアベンダーやクラウドサービスプロバイダーの名前を騙ります。これにより、受信者は「この会社からの請求はあり得る」と感じてしまいます。
  2. 本物そっくりのメールと請求書: メール本文は、正規の連絡文面をコピーするなどして作成されており、非常に自然に見えます。添付されている請求書ファイルも、ロゴやフォーマットを正規のものに似せて作成されており、一見しただけでは偽物と判断がつきにくいように工夫されています。
  3. 緊急性の演出: 「ライセンスが期限切れ間近」「サービスが停止する可能性がある」「早期支払いの割引がある」など、受け取った側に「早く手続きしなければ」と思わせるような文言が含まれていることが多いです。
  4. 振込先口座の変更指示: 正規の請求書との決定的な違いである振込先口座は、「合併により振込先が変わった」「担当部署の変更に伴い口座が変わった」など、もっともらしい理由をつけて変更されたかのように指示します。

攻撃の兆候:ここに気づけば防げたかもしれない「いつもと違う点」

このような攻撃メールには、注意深く確認すれば気づける「不審な兆候」が隠されています。この事例で被害に遭われた企業でも、後から振り返ると以下のような点が確認されました。

事例から学ぶべき教訓と対策のヒント

この事例から、中小企業経営者や従業員の方々がBEC攻撃の予防や早期発見のために学ぶべきことは多くあります。コストをかけずにできる基本的な対策が非常に有効です。

まとめ

ソフトウェア更新費用を騙るBEC攻撃は、企業の日常業務に紛れ込みやすく、誰もが被害者になる可能性があります。攻撃者は巧妙な手口を使いますが、送信元メールアドレスの微細な違い、請求書の不自然さ、振込先口座の情報など、注意深く確認すれば必ず「いつもと違う点」「怪しい点」が見つかります。

今回ご紹介した事例から学べる最も重要な教訓は、「安易に信用せず、必ず正規の方法で確認を行う」という徹底したルール作りと、それを組織全体で実践することです。高額なセキュリティシステムを導入しなくても、従業員一人ひとりの意識と基本的な確認作業の徹底によって、多くのBEC攻撃は防ぐことが可能です。ぜひ、この事例を参考に、皆様の会社でも改めてBEC対策について話し合ってみてください。